好きになりたかった!

好きになりたかった!

気軽に家で楽しめるワインについて、ちょこっとチェックしてみた。

きっかけはジョン・ボネが書いたThe New California Wine という本を読んだときのこと。彼が書いているテーブルワインの項に出てくるワインを飲んでみたいと思ったのだ。

とってもいいストーリーで、記載されているワインを好きになるかもしれないと興味津々。

ジョン・ボネは長いことサンフランシスコのクロニカル誌のワインページを担当していた。彼はナパを代表する熟したタイプのワインに反対していて、そういったタイプのワインは推薦していなかった。だから当然のことだけれど、IPOBの団体のサポータである。

ところで、この彼は最近クロニカル誌のワイン担当から去った(解雇?かどうかはわからないけれど)。そしてサンフランシスコにある他のアルコール関係の雑誌社に入ったという話を聞いたけれど、今はニューヨークに移っている。ガールフレンドがニューヨークで良い仕事のオッファーがあったので、二人でニューヨークへ越したのだという噂。

カリフォルニアのデイリーワインは大手のワイン会社のほぼ独占市場。カリフォルニアだけじゃなくて世界的に大手のワイン社が大きなシェアーを誇っているのが現実。これは最近のことではなくて、ずうっと前からだ。

カリフォルニアのテーブルワインの世界では、ツー・バック・チャックのように2ドルのデイリーワインが造られ始めたと同時に、たとえばケンダル・ジャクソンのヴィントナーズ・リザーブ(Vintner’s Reserve)のように、あたかも手造りワインのようなマーケティングを展開するようになっているとジョン・ボネーは指摘する。ヴィントナーズ・リザーブ(Vintner’s Reserve)は大量に生産されて大型のチェーンスーパーにびっしりと並んでいる

小規模のワイナリーが手ごろな価格(20ドルが果たして手ごろな価格なのかどうかは別問題として)のワインを生産してガロやコンステレーションやケンダル・ジャクソンなどの大手ワイン社の価格に太刀打ちするのは困難。その原因としてカリフォルニアのブドウの価格、土地の価格、人件費等々があげられる。

そんな状況の中で才能があって高級ワインをすでに造っているのだけれども、デイリーワインを造る責任もあるという革新的な考えを持った新しいカリフォルニアの醸造家たちが登場してきていると彼はいうのだ。

このことに惹かれて、彼がこの本で紹介しているテーブルワインを買って飲んでみた。

まずは赤ワインから。

Lioco

テロワールにこだわったシャルドネ(IPOBのメンバー)造りで知られているけれども、生産量が1万ケースというソノマ・カウンティのシャルドネと下記のカリニャンがこのワイナリーを経済的に支えている。

ソノマ・カウンティのシャルドネは良い評価を受けているのは知っている。でも正直に言うと、ここ数年、私はシャルドネに飽きてしまって、あんまり飲まない。イタリア、ドイツ、スペイン、ポルトガル、オーストリアとヨーロッパの白を飲むことが多い。

そんなわけでグッドヴァリューといわれているソノマ・カウンティのシャルドネをスキップして、赤ワイン、カリニャンを飲んでみた。

2012 Indica  (Mendocino County ($20)

メンドシーノ・カウンティにある樹齢のいったカリニャン種から造ったもの。

品種の香りはなくて、しっかりした梅干の酸が際立っている。食べ物と一緒に楽しむワインで、ワインだけで楽しむのは、ちょっと苦しい。チキンのマイルドなソーセージと一緒にいただいたのだけれど、ソーセージを飲みこんだ後だと、「すっごくいいということはないけど、ま、いいか」と納得。ソーセージを口に入れるのを忘れてワインだけを口に入れたら、すっぱい!

メジャーな品種を追わないで、人々の関心が薄い古いカリニャン樹からワインを造ろうとしてるのは素敵なこと。でもまた飲もうという気にはなれなかった(泣)

Broadside

サンフランシスコのワインバー「Terroir(ナチュラルワインを扱っている)」で働きながら、独自のラベルでワインを出してたクリス・ブルックウエイがパソ・ロブレスを拠点にするブライアン・テリッツィと組んでBroadside(白黒の大胆かつ素朴なラベル)というラベルでフレンドリー価格のカベルネの生産を2006年に始めた。

シャルドネ、メルロー、カベルネを1万ケース生産。

2012 Cabernet Sauvignon “Margarita Vineyard” Paso Robles ($19)

パソロブレスにあるMargarita Vineyardのブドウを使ったカベルネだ。

単一畑のブドウを自然酵母で発酵させ、加酸はせずに、新樽はほぼ使わないで造っている。

いいねえ!とまたしても感激していそいそとボトルを開けた。

きれいなフルーツ!けれども、またしても酸味が生?なのだ。私はフルーツが十分に熟することがない道北の寒い地方で育った。祖父の家の庭の木からもいだグスベリや固い梨を齧ってみて、本当はこんなに酸っぱいものではないんだよなあ、と思いながら食べた子供時代。あのフルーツの味なのだった。

未熟なフルーツの味。房をつげすぎてうまく熟さないのか、Margarita Vineyardは海に近くて高地にあるというから、カベルネの栽培には涼しすぎるのか、それとも今まで主流だった過熟フルーツに対して過剰に反動して、早くに摘んでいるのか、、、、。

アイデアと価格に惹かれて好きになりたかったのに、、、(泣)

一緒に夕食をしていた娘がこのワインを飲み込んだ後に「喉がひりひりする」と喉を押さえた(再泣)。

Foxglove

ボブとジム・ヴァーナーはVarnerというワイナリーを所有。サンタ・クルズ・マウンテンにある Spring Ridge Vineyardから造るシャルドネで知られている。この二人がFoxgloveというラベルで25000ケースの15ドル以下のシャルドネ、ジンファンデル、カベルネを生産している。ブドウはセントラル・コースト(主にサンタ・バーバラ・カウンティとパソロブレス)の畑から買っている。あまり手を加えないで生産。酸を抜いたり加えたりせず、いろんな畑のブドウをブレンドすることによって、ワインを造り上げる。

2012 Cabernet Sauvignon (Paso Robles) ($13)

フルーティというより土、ハーブ、タバコの香りがアクセント。過熟風味と香りはない。ワインだけで楽しむのは、私は避けるけれど、食べ物と一緒だと十分に楽しめる。この価格ならまた買うかも。恋焦がれるほど好きというんじゃないけれど、嫌いじゃないっていえるワインに出会えた。(笑)

Tierra Divina (元Laurel Glen

ジョン・ボネの本に書いてあるテーブルワインを毎日飲んでみていて、ふと気が付いた。彼が言うカリフォルニアの新しい考えを持つ革新的な醸造家が登場するずっと前から、元ローレル・グレンのオーナー(パトリック)と醸造家(相棒)が1993年から造っているReds。そんな昔から二人は高級ワインだけじゃなくて、赤ワイン好きが懐を心配しなくても十分に楽しめる赤ワインを造ろうといって造り始めたのだ。それも大手に対抗して驚くほどフレンドリーな価格で造り続けている。

2012 Reds ($8)

ローダイで出会った古い畑のブドウ樹を守ってブレンド。それもメジャー品種のカベルネじゃなくて、ジンファンデル、カリニャン、プティ・シラーといった阻害され気味の品種を使って造り始めたというのが斬新。それが今の世代に新しいアイデアとして受け止められているのが、また斬新。

ジョン・ボネが勧めているワインに比べると、もう少し熟したブドウから造られている。加酸やアルコールを抜くといったことはしていない誠実なワイン。

黒系のフルーツが豊かでエキゾチック。酸味がきちんとフィニッシュにあるので、食べ物とも良くあってくれるし、ワインだけで飲んでも大丈夫。

Kendal Jackson

大手のワイン会社が大量に生産しているのに、手造りワインみたいに宣伝しているワインも、一応、飲んでみた。

2012Vintner’s reserve ($20)

ほんの少しプルーンの香り。色がすごく濃い(多分、メガパープルを使っている)。それにアルコールも抜いているだろう。

個性はないけれども、肩がすくむほどの酸っぱ味もなく、多数の人が気負うことなく飲めるワインに上手に造ってある。20ドルというのは決して安くないから、私は20ドル出すなら、もう少し個性のあるワインを探すけれど、このタイプのワインが好きな人(飲みなれている人)が多いから、スーパーにたくさん並んでいるのだろう。

*メガパープル:ルビーレッド(Rubired)の果汁を濃縮したもので、色を濃くするのとフルーツの甘味を加えるのに使われる。主に安価なワインに使われているけれど、高級ワインにも少量使われることもあるらしい。化学薬品を使っているわけではないから害にはならない。コンステレーションはメガパープルを大量に生産して大いに稼いでいるとか。

Rubired1958年にUCデイヴィス校のオルモ教授がティント・カオシュ種(ポルトガル)とアリカンテ・ガンジン種を交配して作り上げた黒ブドウ品種。収穫量が多く色が濃い。サン・ホワキン・ヴァレー(南カリフォルニアの広大な平地)で大量に栽培されている。

以下は2ワイナリーがセカンドワインとして出しているワイン。メインのワインが経済的に不調のときに助けになるということと、フレンドリー価格のワインを提供しようということで造られている。どちらのワインも悪くない。価格がすごく安いというほどではないのでグッド・ヴァリューとはいえないかな、、、。。

Cep (Peay Vineyards)

2013 Sauvignon Blanc “Hopkins Ranch” Russian River Valley ($23)

ソーヴィニヨン・ブランのアロマがないのに、ちょっと驚いた。 

Tous Ensemble (Copain)

 ★2012 Pinot Noir Anderson Valley ($24)

ワインショップにピノを買いに行って、この価格帯でめぼしいピノがない時に、このワインがあったら買う。間違いなく楽しく飲める。

著者が取り上げているテーブルワインが受けに受けて、センセーションを起こすということは、多分ないだろう。でも著者のワインセンスに共鳴する若いソムリエ(特にニューヨークとサンフランシスコ)とかコンブチャ(combcha-紅茶キノコ)を飲む人たちは、多分好きなんだろうね。そういうワインに関心を示すオタッキー(古い?)消費者が増えている。

コンブチャについてはサイトのブログ「ファーメンテーション・バー」を読んでください。

結論としては、好きになりたかったのに、好きになれなかった。残念!