遅ればせながら 2月初旬にニュージーランドに行った時の全体的な印象と出会ったワインについて書いてみました 。
今回のニュージーランド訪問は栽培地区を学ぶとか有名ワイナリーを訪問するとかが目的ではなくて、ニュージーランドを大まかに知りたいツーリストとして行きました。

オークランド (Auckland)からホークス ベイ(Hawke's Bay)の沿岸都市ネイピア(Napier)へ
オークランド (Auckland)の飛行場が 大 嵐による雨で洪水のために閉鎖され、オークランド (Auckland)のあちこちが洪水になった数日後に到着しました。ウーバーの運転手さんが洪水の被害がすごかったこと、国民の98%がコロナの予防接種を受けているので、マスクをする必要がないことを話してくれました。カリフォルニアではまだ人が多く集まるところではマスクをしていたので、マスクフリーが不思議な感じでしたが、慣れると解放感で体が軽くなった感じがしました。
市内はロープが張られて通行止めの箇所があって、車の数が少なく静かな夜でしたが、車で15分ほどのところにある、評価の良いホテルのレストランへ行ってみました。この夜に「二人でボトルを一本オーダーしてもニュージーランドのワインの大まかな印象がわからないので、バイザグラスで白4赤4を飲んでみよう」ということにしました。ワインを選んでもらう基準は大まかに「甘口で青いハーブやグスベリーの香りと味わいが特徴のアメリカでよく見るニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは避けて、残糖度が低い辛口の白とオークが効きすぎていない赤」ということにしました。新人の中国系女性ソムリエさんが張り切って選んでくれました。この夜のディナーでは、リクエスト通りに白は辛口、ピノ・ノワールは土の香りが主であまり印象に残るワインがありませんでした。
翌日、朝早く起きて、レンタカーで雨の中を 6時間かけて小さな沿岸都市ネイピア(Napier)に行きました。途中 ずっと雨(時々豪雨)が降って 、レイにとって初めての運転席が右側の運転にもめけず 無事にネイピア に着きました。ニュージーランド北島の沿岸都市ネイピアは、有名なワイン生産地ホークス ベイ(Hawke's Bay)にあります。 1931 年の地震後に再建された街は、アールデコ様式の建物があって、住みやすそうなかわいい町でした。

テ マタ・エステート・ワイナリー(Te Mata Estate Winery)訪問

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この町へ行った理由はホークス・ベイにあるテ・マタ・エステート・ワイナリー(Te Mata Estate Winery)を訪問するためです。このワイナリーを 予約したのは、友人のダグ(ジンファンデル生産で知られるNalle Wineryのオーナー)が このワイナリーのオーナーと 仲が良くて、 ぜひ行ったらいいと強く勧められたからです。ダグと奥さんのリーはニュージーランドが大好きで、ソノマに家族がいなければ ニュージーランドに移り住みたいというほど 、ぞっこん 惚れ込んでいます 。これまでに10回以上ニュージーランドを訪れて毎回3週間くらい滞在しています。
テ・マタ・エステートは、1895 年から継続的に運営されている家族経営の、ニュージーランド最古のワイナリーです。1974 年にバック家とモリス家が買収、歴史的なニュージーランドのワイナリーをモダン化しました。この日はバック家の次男のニックがワイナリーとテイスティングを担当してくださいました。ニックは 2003 年にテ・マタ・エステートの取締役に就任し、2013 年に最高経営責任者に任命されています。大学卒業後、ロンドンのワイン業界でワインビジネスを学び、多くの高級ワインを試飲しました。新しいブドウ畑を購入、既存のブドウ畑の植え直し、ワイン生産設備の近代化、新しいワインの開発、新しい市場の拡大と指導力を発揮しています。現在、テ・マタ・エステートのワインは世界の45の市場で販売されているとのことです。
モダンな ワイナリーでした。クリーンで良質で飲みやすいワインでした。わざわざ アシスタントワインメーカーが試飲してる時にお話しに来てくださったのですが、聞きなれないアクセントで、彼のお話が私には理解できなかったのが残念。   

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ホークス・ベイ(Hawke's Bay)地区のテ・マタ・エステート周辺のブドウ畑は手入れが行き届いていて、道路沿いに見えるワイナリーはモダンなワイナリーが多かったです。私としては、この地区はシラーがいいかなと思いました。

ワイナリーレストラン

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ダグがこの地区のワイナリーレストランへ行くといいといって、2つのワイナリーレストランを勧めてくれたのですが、予約なしでは入れないことに気が付きました。 たった一つ空いていたのが 街の外れにあるミッション・エステート・ワイナリー(Mission Estate Winery) のレストランでした。ちょっと古くなっていましたが 素晴らしい建物でした。歴史的に由緒のあるワイナリーで、1838年にフランスの伝道師たちがやってきたところから歴史が始まって、1880年にフランスの伝道師たちが住むために建てられたのがこの建物です。1909年に頻繁に起こる洪水被害を避けるために、この建物を11に切って現在地へ移動。1972年にワイナリーの建物が建てられて、1979年にポール・ムーニーが醸造責任者となって、現在の規模まで広げています。テイスティング担当のスタッフはフレンドリーでした。レストランの料理も悪くなかったです。ワインがやや古いスタイルで洗練されていないワインだったのが残念でした。

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翌日、また6時間かけてレンタカーでオークランドへ戻りました 。また同じ道を帰るという計画が結果的に時間の無駄となってしまいました。

ユニークなレストランAlphaとSATOワイン

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オークランドへ無事戻って、この夜はホテルがある町の中心から離れた、ツーリストがいなくてローカルが多い地区(名前を忘れてしまいました)へ行ってみました。小さなお店やレストランが並んでいるので、どこにしようかと散歩がてら歩いてました。レイが「ここが面白そうだよ」というので立ち止まって観察。小さなベーカリー風というかカフェ風です。きちんとしたディナーが食べられないのじゃないかなというのが私の第一印象。でもレイがここに入りたいというので、ここに決めました。
レストランの中は、真ん中に大きな四角いテーブルが一つ、穏やかなオレンジ色の少し暗い感じのライトがテーブルの中心部を照らしていて、テーブルの回りに椅子が15席ほどと、窓に面したカウンターにスツールが5つくらいあるだけです。小さなレストランの名前はAlpha。 2021 年後半に 6 席の高級レストラン Pasture(世界的に有名なレストランで予約するのに数カ月かかるそうです)の姉妹店として加わったとのこと。当初はベーカリーでしたが、ブランチとランチのサービスを始めました。 現在はそれに加えて、夕食を週に数回提供しています。たまたま私たちが立ち寄った夜はディナーをサービスしていたのでした。椅子が2つあいてるからどうぞと言われて、ちょっと狭いけれど(日本みたい)ここに落ち着くことにしました。 このレストランのチームはこのスペースをテストキッチンとして使っています。遊び心のあるでも洗練されたを料理を出していました。
料理のメニューは数が少なくて、シェアープレートのメニューと一品料理が5つほど。手作りのパスタや、キャビアをトッピングしたグリルチーズなど、独特な料理がありました。美味しかったです。絶品はなんといってもここで焼いたパンです。もともとベーカリーだったというのも納得です。
ワインリストもワインの数がそれほどリストアップされていません。料理に合わせて辛口の白にしようとワインリストを見ていたら、SATO というのが目に入ったのでオーダーしてみることにしました。

SATO WINE
佐藤夫妻は 東京とロンドンで国際銀行勤務後、ワインへの情熱を追求するためにニュージーランドへ飛びました。 クライストチャーチのリンカーン大学でブドウ栽培の大学院の学位取得を目指した短期間の滞在の後、2006年にセントラル・オタゴに移住しワインを造り続けています。また夫妻はブルゴーニュ、ロワール、アルザスで醸造を体験しています。
2009年にワイナリーを設立しました。私たちが飲んだリースリングはセントラル・オタゴ周辺のオーガニック栽培のブドウ畑からブドウを調達したものです。2016年に独自のブドウ畑を買い、カベルネ・フラン、 ガメイ、ピノ・ノワール、シャルドネ、シュナン・ブランなどを栽培しています。自然発酵、発酵プロセス中に添加物を一切使用せず、瓶詰め直前に最小限の亜硫酸塩を使用。
リースリングは鮮やかな酸味と程よいフルーツの味が重なった、繊細なワインでした。
フレンドリーなニュージーランドっ子。
Alphaレストランで私たちが座った席の右隣はスタイリッシュな中国系の若い男女半々の5人ほどのグループでしたが、絶対に私たちを見ないように(無視)してました。その正反対に左側とテーブルの向かい側に座っていた2カップルが生粋のニュージーランド人を感じさせてくれました。それはフレンドリーでまるで前からお友達だったように会話がはずみます。ビジネスで成功している様子がわかる(奥様の二人とも大きなダイアモンドの指輪をしてました)50代前半の男性二人は、若かりし頃はラグビーの選手だったとのことで日本の仙台でプレーしてた時の話を懐かしく話してました。ご自宅が徒歩15分の距離にあるとのことで、このレストランの常連みたいです。こういうニュージーランドの人たちとの出会いがノール・ワイナリーのダグをニュージーランドに住みたいと思わせる一つの理由なのでしょう。この旅を通じて、多くの人たちがフレンドリーでした。

ノーザン ・エクスプローラー号でウエリングトンへ

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オークランドに戻ったのはノーザン ・エクスプローラー号という 列車で首都ウエリングトン まで行くためです。ノーザン ・エクスプローラー号はオークランド・ ストランド駅から出発します。現在、オークランド ・ストランド駅はノーザン ・エクスプローラーの列車サービスのみに使用されていますが、 この駅の歴史は長く、2003 年にブリトマート駅が開業するまで1930 年代から市内のメインステーションとして使われていました。
全席指定の座席はゆったりとしていて清潔で快適でした。
列車はウエリングトンまで11時間という長い時間をかけて南下します。速度は最高時速が約 100 キロ 、平均時速は55 キロ とゆっくり目なので時間がかかります。羊と人間との比率は5対1ということで、羊が多いというのが実感できました。列車は広がる平地や山の頂上などを走っていくのですが、広大な牧場に多いところでは1000頭とかの羊がゆったりを草を食んでるのがあちこちに見えました。放牧場のすぐ近くまでレールが敷かれているところは、羊や牛(牛もたくさんいました)の驚いた表情が見えるのです。ゆったりと美味しそうに草を食んでいたのに、突然うるさい音を立てながら列車がやってくるのだから羊たちにとっては迷惑な話ですよね。でも羊たちが一斉に丸くなって走って列車から離れていくのがとってもかわいくて、何度見ても飽きませんでした。
小さな町を時々通過するのですが人を見ることはほとんどありません。一度だけ、サイクリングのグループが踏切にいて、なんと男性が手を振ってました。これほどに人間が少ないと人懐こい気持ちになるのかもしれません。
平地を通過しているときに見た広大な ぶどう畑は半端じゃなかったです。どんだけワインを造ってるの?と思わずつぶやいてしました。行けども行けども続くブドウ畑。ブドウ畑の終わりが見えないくらいに広大なブドウ畑が続きます。大量生産用のソーヴィニヨン・ブラン種の畑でしょう。安価なワインを大量に飲むイギリスの影響でしょうね。輸出量はイギリス、次がアメリカだそうです。ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランの約90%はマールボロ産。通過してる地区はマールボロではないのにこの広さ。 ニュージーランドのワイン生産量は世界のわずか 1% に過ぎませんが、依然として「世界のソーヴィニヨン・ブランの首都」として君臨しているということを納得。 北島と南島で構成されるこの国では、オレゴン州よりわずかに広い栽培面積、約 50,000 エーカーのソーヴィニヨン ブラン種が栽培されています。
広大なぶどう畑の栽培は人口約5,223,100人(2023年8月30日現在)のニュージーランド人では賄いきれないですよね。栽培のニーズに応えるために、独自の葉摘み機であるギャラガー・リーフ・プラッカーやその他の剪定機械を開発しました。ギャラガー葉摘み機は低コストを維持しながらソーヴィニヨン ブラン種の樹勢を制御するのに役立つとのことです。 ソーヴィニヨン・ブラン種の樹勢を低く維持することで、熟した果実の特徴を出し、植物性の香り(アスパラガス?)の香りを軽減します。

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各シートに追加料金なしで利用できる音声ガイドがあって、その地域の歴史に関する解説をしてくれるので興味津々で聞きました。素晴らしい機能です。
ダイニング 列車があるというので行ってみました。カジュアルなテーブルが並んでいて、窓ガラスが大きくて 外がよく見えるというぐらいで豪華なダイニング列車ではありませんでした。食べ物は事前にパッケージ化されていて、飛行機の食事(エコノミークラス)とよく似ていました。レストランの入り口にエスプレッソ・バーがあってバリスタもいてカプチーノマシンからきちんとカプチーノを作ってくれます。スタッフの方たちはとてもフレンドリーでした。

北島のユニークな景色、今までに見たことがない言葉では言い尽くせない雄大な景色。傾斜地が重なり遥かかなたまで終わりが見えない丘陵地。渓谷。岸壁の山。11時間が長いとは感じませんでした。 素晴らしい景色を堪能して 癒されました。素晴らしい鉄道の旅の 1 つでした。他の交通手段では見つけるのが難しい壮大な景色を満喫できます。
強風の町ウエリングトン

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11時間かけてウェリントンに着きました。 ニュージーランドの首都ウェリントンは、クック海峡の北島最南端近くにあります。 コンパクトな都市で、ウォーターフロントの遊歩道、砂浜、稼働中の港、周囲の丘にあるカラフルな木造家屋が広がっています。 クック海峡を通る強風により、「風のウェリントン」というニックネームが付けられています。ウェリントンはどこかサンフランシスコに似てると言われてる街で確かに山があって湾があって涼しくて似てると言えば 似てる 綺麗な街でした。だけど折からの嵐のせいもあるのでしょうが、強風はすごかったです。
ニュージーランドの国立博物館「テパパ・トンガレワ」へ行ってみました、 テ・パパ(マオリ語で「宝箱」の意)として知られるこの美術館は、ニュージーランド国立博物館と国立美術館が合併して1998 年に開館しました。 毎年平均 150 万人以上が訪れ、世界で 26 番目に訪問者数の多い美術館です。この建物には 6 つのフロアがあり、ニュージーランドの文化、歴史、環境に特化した展示品、カフェ、ギフト ショップが入っています。ゆったりしたスペースが良かったです。一日中いても学びきれないくらいの大きな美術館です。でもすごかったのは風。美術館の入り口に着くまで建物の横を歩いたのですが、風で吹き飛ばされそうでした。
ウォーターフロントの遊歩道に沿って並んでいるカフェやレストラン、バーに立ち寄って楽しかったです。夜は大雨の中、知人が勧めてくれたレストランは休みだったので、地元の新聞で高い評価を受けているレストランへ出かけました。ここでも「甘口で青いハーブやグスベリーの香りと味わいが特徴のアメリカでよく見るニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは避けて、残糖度が低い辛口の白とオークが効きすぎていない赤」という基準でソムリエさんにバイザグラスの赤と白を4種ずつ選んでもらいました。どのワインもきれいに造られてましたが、フルーツの個性はなくて、白は酸味が強く、ピノ・ノワールは土の香りがする硬いピノという印象を受けました。 (つづく)