ドイツのワイン商、マーティン・コスラー

4月にドイツへ行った理由の一つが、マーティン・コスラーが経営するワイン輸入会社「K&U」が毎年開催するワインテイスティングに参加するためでした。

マーティンは多分50代後半、ドイツのワイン業界ではちょっと名の知れるワイン商です。

私と夫のレイが彼に出会ったのは28年前、ドイツのVWキャンピングカーを現地で買って幼い娘と3人で約2ヶ月ヨーロッパを回ったときです。

ヴィンエクスポに参加するのも目的の一つでした。

ヴィンエクスポで夫はローレル・グレンのブースを出だしてました。といってもリラックスしたもので、オーナーのパトリックと交代でブースに入ってたり、二人とも他のワインの試飲に行ってしまって、「ご自分でついでテイスティングしてください」とメモ置いてお出かけるというくらいで、真剣にバイヤーを探そうという目的はないのが明らかにわかるブースでした。

でも二人の若きインポーターに出会いました。一人はベルギーのインポーター、マーク、もう一人がドイツのインポーター、マーティンです。

このリラックスしたブースに二人はやってきました。ローレル・グレンのワインを勝手に注いで試飲して興味を持った二人はレイにコンタクトをとって、会場で会いました。二人はボルドーとブルゴーニュのワインが高くなりすぎているし、もうワクワクしないというので、当時、注目を浴び始めていたお買い得で、品質が急上昇していたカリフォルニアワインに関心を示したのです。

「興味があるから、事務所に来てよ」という二人に、レイは気軽にオーケーと返事したのです。GPSも携帯電話もない時代に、行くからと言われて、本気?とぎょっとしました。

まずはベルギーのブルッセルの近郊に住むマークを訪問。当時まだガールフレンドだった(今は奥さん)、アニカが経営していたレストランに行きました。古い城壁があったのを記憶しています。ここでカリフォルニアワインをベルギーで売ろうよという話になりました。

次はドイツのニュルンベルグまで行きました。途中、あちこちで道路工事がなされていて、約束の時間に2時間も遅れてしまいました。でもマーティンは一向にイライラした様子がなく、予約したレストランは閉まってしまったから近くの村のにあるレストランへ行こうというので、彼の後をついてまた運転。庭で食事をしたのですが、ミツバチがブンブン。レイが娘にミツバチは刺さないから大丈夫だよというのを娘は素直に信じて蜂が手の甲に止まるのを眺めてました。本当に刺されませんでした。後でマーティンがこの光景を見て、波長が合うなあと思ったと話してくれました。

まだ輸入業を始めたばかりの若い二人でしたが、ワインに対する情熱と知識と味覚で、ワイン商として成功しました。今はとってもお金持ちです。今でも私たちは友人です。

日本とはシステムが違って、ベルギーのマークは輸入してワインショップやレストランにも売りますが、個人のお客さんも(といってもケース買いですが)多いです。

ドイツのマーティンは個人の客さんだけです。ネット販売、会社にワインを取りに来る人がお客さんで、彼のワインのセレクションを聞いてレストランがマーティンに連絡してくるというパターンです。二人とも他の国のワインも売っていますが、カリフォルワインの第一人者としt知られていて、特にマーティンはセミナーを依頼されたりしてます。

ちなみにマーティンはイタリア(10地区)、ポルトガル(2地区)、スペイン(5地区)、フランス(12地区)、オーストリア(4地区)、ドイツ(7地区)、カリフォルニアのワインを輸入しています。ボルドーやブルゴーニューのメジャーなワイナリーを外して、現地を訪れて、試飲して彼が納得するワインだけを輸入しています。全部で150社とのことです。ワイン産地は陸続きだから訪問するのも楽だよね。イタリア語とフランス語が話せるし、彼の英語は完璧だし。

二人とも年に一度大規模な試飲会を開催します。マークは輸入しているワイナリーのうち、100人のワインメーカーを招待して試飲会を開催。2日間のティスティングの最終日に100のワインメーカーが勢ぞろいしての会食は迫力がありました。残念ながら去年が多分最後だと言ってましたが。

マーティンは消費者対象(レストランのオーナーやソムリエもやってくるとのこと)の試飲会を開催してます。この試飲会にレイは毎回参加してますが、私は初参加。

決して豪華な会場ではありませんが、広い会場には肉料理、サラダ、スープ、パスタなどの食べ物、オイスター、チーズ、パン、チョコレート、エスプレッソ、デザートを出すお店も参加。ここで買い求めて用意されているテーブルでランチなりコーヒーブレイクなりをするといった形態です。

土曜日と日曜日の二日間の開催ですが、毎年2000人もお客さんがやってきます。今年も2000人、すごい熱気です。マーティンが輸入している150社のワイナリーのうち、今年は70社を招待してました。若者から熟年層まで参加者の年齢幅が大きいです。というのはマーティンは幅広いワイン消費者が興味を持つワインを輸入しているからです。中価格帯の個性を持つワインを中心にセレクトして扱っているのも特色です。

オーガニック、バイオダイナミクスのワインもかなりの数参加してましたが、主流ではありません。

「バイオダイナミクスを信奉しているのではない。不必要な物質を使っていなくて、美味しかったら、オーケー」

「次はナチュラルワイン?」

「質が良くて美味しかったらいいんじゃないの。ナチュラルワインだからと言って、いかれたワインだったら、絶対に輸入しないよ。今まで科学物質を使っていた生産者たちに、使わなくてもいいワインを造ることができるという意識が芽生えて良い影響を与えることを期待している。」

カリフォルニアのカルトワインを始め高級ワインを多く輸入していた時代もありましたが、価格が上昇した上に、アルコール度の高い濃い(?)ワインが主流を占めたときに、彼が扱いたいワインじゃないというので、輸入ワイナリーの数を減らしました。

マーティンのワイン知識は言うまでもなく、すごいです。いろんなワインについての情報を書きまくっています。その一例として、毎回試飲の際にテーマを決めて試飲を提案しています。今回は地質がテーマ。残念ながらドイツ語なので読めませんが、花崗岩とコース1に書いてあるのだけわかりました。70のブースを回る参考にというので、5つのコースを提案していて、各コースでワインの説明とブース番号が書かれているので、コースを選んでワインを試飲してみるというのも、すごく勉強になるよね。

 

カリフォルニアのブースにもたくさんの人がきて大繁盛。この国の人たちはワインについて本当にオープンだなあと感じます。名の知れたワインだけを追いかける人は、もちろんマーティンの試飲会には来ないよね。

いろんなワインを試飲することができました。70もブースがあって、各ブースで5種類とかワインを出しているのだから、2日間では全部を試飲するのは不可能。マーティンの会社のスタッフが、ここがいいよと教えてくれた所を回りました。

ドイツワインも、いうまでもなく多く扱っています。今回の試飲で、ドイツワインの深さを直伝されました。リーチとか白桃の香りとホロリとした甘さが特徴のリースリングではなくて、綺麗な酸と透き通るような味、ミネラルを感じる素晴らしいリースリングの存在を改めて認識しました。

個人会社でこのレベルのテイスティングを毎年開催していて、2000人がやってくるというのはすごいですよね。

秘訣はワインにとても真摯であること、意見をしっかりもっていて、意見が合わないことを恐れていないことかな。

マーティンの会社のサイトです。ドイツ語ですが、英語訳が出来るので、興味があったらのぞいてみてください。

https://www.weinhalle.de/